直流モータの回転原理


ここでは直流モータ(DCモータ)の回転原理について簡単に説明したいと思います。DCモータは歴史が長く、今現在でも多くの電化製品や自動車などに沢山使われています。DCモータはブラシがあるのが 特長です。ブラシがないDCブラシレスモータもありますが、ここではブラシ付のDCモータについて説明したいと思います。正確にいうとDCブラシモータが正式の名前でしょう。よく略して DCモータと呼んでいるため、このページでもDCモータと書きます。



上の写真がDCモータを分解した状態です。一番左にブラシがあって、このブラシから整流子を通って、回転子の電磁石に直流電源を供給します。そして、下の絵がDCモータをCAD上で作った 3Dモデルです。



ブラシの上が電源のプラス、下が電源のマイナス状態です。この向きを逆にするとDCモータは逆回転します。外側の青色の半円と赤色の半円は固定子の永久磁石です。青をN極、赤をS極と しましょう。永久磁石のNからSへ向かう磁力線と同じ方向をd軸、90度交差する方向がq軸です。(d軸は直軸、q軸は横軸の意味です)後ほどお見せする回転するアニメで分かると思いますが、 回転子の電磁石がd軸に向いた時は電流が流れないことになっています。モータがトルク(回そうとする力)を出すにはq軸電流を流す必要があります。d軸電流はトルクにならず、全ての 電気エネルギーが電磁石のコイルで熱エネルギーに変化される無駄な電流です。

それではまずこの絵の通りに電流を流して見ましょう。



整流子に書いてある黄緑の矢印は電流が流れる向きです。回転子の三つの電磁石はそれぞれU、V、W相にしましょう。電磁石の左から右へ電流が流れた場合は電磁石がN極に磁化されるように コイルを巻いたとしましょう。U相の場合、電磁石の右から左へ電流が流れます。そうするとU相はS極の赤になります。V相とW相はVとWが直列状態になって、電流はV相の左から右へ、そして W相の左から右を通って電源のマイナスに流れて行きます。V相をW相は電流が左から右なので、N極の青色に磁化されます。 そうすると、U相の電磁石は固定子のN極に引っ張られます。V相は同じN極なので反発します。W相は固定子のS極に引っ張られます。それぞれの相に働く力が黄色の太い矢印です。これで回転子は 回転しようとします。 ここでU相がちょうどq軸に向いていますので、最大のトルクポイントです。そしてこのまま時計回りに30度回転したのが下の絵です。



30度回転すると、整流子が一緒に回転するので、電流が流れるパターンが変わります。この場合、U相は右から左、V相は左から右です。30度回転する前と同じですが、W相に電流が流れなく なりました。整流子をよく見てください。W相のコイルが短絡している状態です。そのため、W相には電流が流れません。W相の向きにも注目してください。ちょうどd軸に向いています。この 状態で電流を流してもトルクは発生しません。逆に他の相が発生するトルクを打ち消すことになります。d軸電流はトルク成分にならないため、流してはいけないのですが、この作業を 整流子が見事に自動的にやってくれます。 そして、さらに時計回りに30度回転したのが下の絵です。



ここからは電流の向きの解説は省略しますが、今度はV相がちょうどq軸に向いていますので、一番トルクが大きいトルクを出す位置です。W相はd軸から離れましたので、再び通電状態です。



さらに30度回転しますと、今度はU相がd軸に向いていますので、U相が通電していない状態です。そしてこのままさらに30回転すると、W相がq軸に来ます。最初の絵のU相の同じ位置にW相が 来ます。ここからは同じパターンを繰り返すことになりますので、このまま継続して回転し続けることになります。 下のアニメが回転し続けている状態です。



DCモータの利点はDC電源を繋ぐだけで回転します。回転方向を変えたい時は電源の向きを変えるだけで取り扱いが簡単です。回転数は電源電圧に比例し、トルクはコイルに流す電流に 比例しますので、制御もシンプルになります。 唯一の欠点はブラシと整流子が機械的に接触していますので、高速回転になると騒音の発生とブラシと整流子が磨耗することです。この欠点を解決したのがブラシレスモータです。 ブラシレスモータは回転子と固定子を逆にした構造で、整流子の役割は機械的接点がない半導体スイッチで行います。ブラシレスモータは別のページで説明します。




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