電動ターボファン製作


ターボファンと言えば飛行機の主翼の下についているあの巨大なファンですよね。正式にはターボファンエンジンといいますが、ジェットエンジンの一種です。
下の3D絵がざっくり描いたジェットエンジンです。



ジェットエンジンには2種類あって、一つは左側にある低バイパスエンジンと言って、軸流圧縮機で空気を圧縮して燃焼室に送って燃焼させ、膨張した高温高圧ガスを後ろのノズルから吐き出すタイプです。 そしてノズル側にタービンがあって、高圧ガスでこのタービンを回すことで圧縮機も一緒に回り、回転し続ける動作になります。 このようなエンジンは後ろに吐き出すジェットガスが推進力となって、戦闘機によく使われます。

もう一種類は低パスエンジンの前に巨大なファンをつけて、燃焼した燃料のエネルギーの殆どは推進力よりも巨大なファンを回す動力となります。そしてこの巨大なファンの高速回転によって 推進力が生み出されます。 このようなエンジンは高バイパスエンジンと言って、飛行機によく乗る方はすぐ分かると思いますが、旅客機によく使われるエンジンです。

まだまだ飛行機は電気で飛ばす時代ではありませんが、研究してみるのも楽しいと思って、小型のターボファンを電気モータで回す実験をして見ましたので、このページで紹介したいと思います。



つまりファンをガスタービンで回すのではなく、電気モータで回すことです。利点として高速回転は電気モータが得意分野で、構造も非常にシンプルになります。それに実際飛行機に使用した場合、 上空の低い気温とモータが自分が吸い込んだ空気で自ら冷却するのに有利でしょう。 実際人を乗せるレベルの電動飛行機を作るには巨大なモータは作れてもそれに電力を供給する電池の開発が現在の技術では難しいでしょうね。

実は今回小型の電動ターボファンを作って遊んで見ようと考えたきっかけはドローンです。いつもドローンを見るたびにあの剥き出しになっているプロペラに人が当たったら大怪我するだろうと 思って、もしプロペラ代わりにターボファンを使えば安全かなと思いました。ターボファンはファンを覆うケース(ダクト)があるので、ファンが体に当たる危険が少ないでしょう。 故意に上から指を突っ込んだら話は別ですがw



そして上のCADの絵が適当に考えた構想図です。と言っても電気モータで動くファンは既に海外では製品化されています。電動ダクトファン(EDF)と言って、ラジコン飛行機に使われています。 EDFは結構高価で、それを回すインバータ(ラジコン業界での呼び方はESC?)と電源、無線送受信機を全部セットで買うと十万円以上の出費です。

そこで小型の電動ターボファンを自分で作って見ることにしました。動力源は海外製の安いDCブラシレスモータを購入、ファンは家庭用3Dプリンタ、インバータは感光基板で製作する流れです。 まずはファンとファンを覆うダクトをフリーの3D CADでデータを作ります。



モータを回すコントローラ(ESC)ですが、これも殆どが海外製で、低パワーはそれほど高価ではありませんが、自分で作って見ることにしました。基本的にPWMで 速度制御し、モータの逆起電圧を利用して回転子位置信号を作りますので、ラジコンの場合はセンサーレスが一般的です。 そして、下の写真の一番左側が趣味の電子工作でよく作る感光基板ですが、今回も自分でエッチングしました。家庭用のプリンターの解像度と手実装のことを考えると、チップ部品は1608サイズまでかなと思います。 ESCも国産はあまり見たことありません。殆どが海外製です。日本はどちらかと言うと同期モータのベクトル制御が人気のようです。殆どのモータの参考書や技術者と話をすると、ベクトル制御が メインで、ドローンやラジコンに使うDCブラシレス(略してBLDC)はあまり議論されていないように感じます。



今回実験のモータですが、アマゾンで千円以下で購入しました。ネオジム磁石で小型ですが、かなりパワーがあります。今回の実験は50W程度までしか動かしていませんが、最大100Wは出せそうです。 写真に1000KVと書いてありますが、これは電圧ではなく、ラジコン業界でよく使うモータのスペックの意味です。 BLDCモータなので、回転数は電圧に比例します(同期モータは周波数に比例)。よって1Vあたりの回転数を決めた数値がこのKVです。1000KVは1Vあたり1000rpmのことです。この値が大きいと 高速回転しますが、その代わりトルクが落ちます。 意外と加工精度もよく、千円以下ではとても日本では作れないでしょう。

最後に組み立てて動作チェックしました。動作ビデオは音量に注意してください。


再生できない方はここからダウンロードして下さい。 ダウンロード

今回実験結果ですが、推力が思ったより弱く、このままではドローンには使えません。電力を上げれば推力が上がりますが、それでは飛行時間がかなり短くなります。今回の結果では電力1W辺りの 推力が0.8gしかなく、100Wの電力を投入しても80gしか持ち上げることはできません。市販のドローンのカタログを見ると、1W辺り5gくらいの推力があります。今回実験の6倍近くあります。 それでも飛行時間が30分程度です。

今回の推力が弱い原因は何となく分かっていますが、家庭用3Dプリンターではこれくらいが限界かなと思いました。分かったことは小型のファンを高速回転させるより、大きいファンを低速で 回転したほうが効率がよさそうです。それとファンの直径はモータの直径より大きくすることですね。だから今のドロンはターボファンではなく、プロペラ式が多いかも知れません。 ターボファンにしようとすると、モータの直径を小さく、長さが細長い形状が良いかも知れません。まぁ、実験して見ないと分かりませんが、研究する価値が大きい面白い分野かなと思いました。

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