ワニクマ店長の車いじり(全ライトをLEDへ)
旧式の車のライトを全部LEDに変えてみました

2014年に購入した自家用車のライトがヘッドライトのロービーム以外は全部昔のハロゲン式でしたので、全てLEDに交換してみました。
ロービームは車検で特に重視する保安部品なので、これだけは当時高いオプションでLEDにしましたが、ハイビームと他のライトはハロゲンのままですね。
月一回暗い山道を走ることもありますので、ハイビームもLEDしようとしたのが車いじりのきっかけですね。
ハロゲン式ハイビームは2個点灯すると、消費電力が100W以上あり、発熱量も大きいので、補器バッテリの負荷も考えるのも一つの目的です。

今回交換したのは以下の部分です。
・車幅灯(前後)と番号灯
・後退灯と室内灯
・ヘッドライトハイビーム
・フォグランプ
・方向指示灯 ← 一番苦労した部分

注意点はこれらのライトは単なる光る部品と思っているかも知れませんが、日本では厳しい保安基準があります。ワニクマ店長はネット通販でLED電球を
購入してそのまま交換しようと思っていましたが、ネット通販のLED電球は殆どが海外製で、日本の保安基準を満たす商品もありましたが、耐久信頼性が
あまり良いとは言えない感じでした。

ワニクマ店長も安いLED電球を購入して苦労した経験をここで紹介したいと思いましたので、今後車のライトをLED化を考えている方は参考になれたらと
思いました。(但し改造は自己責任でお願いします。)

本題に入る前に少しECUの話をしますが、ライト系はスイッチを入れると点くと思うかも知れませんが、車種によりますが、ECUが管理している車種も多いです。



ECUとは電子制御ユニットの略で、よくメカ設計者は弁当箱と呼んでいました。(面白いですね。似てないんだけどなぁ)
この弁当箱は、中にコンピュータチップ(マイコン)とその他電子部品が実装された基板を金属か樹脂の箱に収納された状態になっています。
主に各センサーの値を読んで計算処理したり、通信(CAN通信がメイン)で他の弁当箱とお喋りしたり、他の負荷を動かしたりしています。

余談ですが、ワニクマ店長も昔独身の時に縁があって、この弁当箱の仕様を決める仕事をしていました。当時も今も思うのは今の車は弁当箱が多すぎですね。
もっとシンプルなシステムにして、弁当箱を減らしたいと思っていましたが、当時のワニクマ店長はそんな権限がなくて(^^;)
と言ってももうこの業界卒業していますので、ワニクマ店長にとってはどうでもいい話ですが、半導体不足で納車が遅れるのは困りますね。

さて、話は本題に戻しますが、最近の車はライト系もこの弁当箱が管理していますので、作業時にショートしたりすると弁当箱を壊してしまうリスクが
あると思いますので、要注意です。
ヒューズが切れるまで弁当箱の中に過電流保護機能があると思いますが(設計によりますが)、どこまで保証を前提で設計しているか分からない
ブラックボックスなので、最近の車いじりはこの弁当箱たちとの闘いでもあるかなと(笑)

ワニクマ店長も旧式車両なので、ライトは単にスイッチと繋がっているだけだと思いましたが、スイッチを入れてからほんの少し遅れてライトが反応
したりしていましたので、絶対弁当箱が(多分ボディECU)管理しているんだなと思いました。作業は慎重にしないと

--------------------------------------------【車幅灯と番号灯をLED化】----------------------------------------

車幅灯と番号灯、室内灯は純正品は5WのT10ソケットの白熱電球ですが、ネット通販で1個数百円でしたので、あまり深く考えないで購入しました。
お洒落な形でこの値段は最初は気に入って喜んでいましたが、1ヶ月後に悲劇が・・・(LEDなのに球切れ)



左の写真がネット通販で購入した製品ですが、このサイズで1.2Wの消費電力でした。1.2Wもあってかなり明るかったですが、最初からこのサイズで1.2Wも
放熱できるかちょっと胡散臭いなぁと思いましたが、予想とおり1ヶ月で球切れして分解して見たら、放熱設計がいい加減でしたね。
LEDチップをこの基板サイズで放熱しようとすると、せいぜい0.5Wが限界かなと。
球切れは定電流降圧チョッパICが故障のようです。このICも素性不明で車載専用ICか分かりません。

不安でしたので、LED電球を自作することにしました。電球買って来てそのまま交換するつもりが電球そのものを開発する羽目になりました。
ちょうど以前某大学の先生と共同研究で購入したチップLEDが余っていましたので、電子部品ショップでT10のソケットのみ購入して手作りのLED電球を作りました。
消費電力が少ないので、チョッパ式より抵抗で電流を制限する単純な回路にしました。そのほうがシンプルで故障率も低く、信頼性も高いです。
ソケットに抵抗とLEDチップを入れて、後はエポキシ樹脂で固めて完成です。
見栄えはどうかなと思いますが、ライトのハウジングの中に入りますので、外からは見えないのでこれで良いかなと。

消費電力設定ですが、純正の白熱電球5Wの発光効率は約3lm/Wになりますので、光束は5W x 3lm/W = 15lmとなります。15lmを発光効率150lm/WのLEDで同じ明るさを
実現しようとすると、15lm / 150lm/W = 0.1Wになります。
車幅灯と番号灯は夜間は常時点灯になりますので、耐久寿命の考慮と、もう少し明るさが欲しかったので、0.16W辺りに設定しました。



上の写真が純正の5Wの白熱電球と0.16Wワニクマ店長手作りLEDの明るさ比較です。発光効率の計算とおり、LEDが少しだけ明るい感じです。



カメラの感度がよくて明るく見えますが、純正より少し明るい程度です。純正は5Wの電球が6か所でこれだけで常時30W電力を消費していますが、今は0.16W
LEDが6個で0.96Wしか消費しません。色が真っ白で高級感を感じます。
一応番号灯は20m先で認識可能と板面の照度が30lxの保安基準がありますが、手持ちの照度計で測ってみたら30lx以上ありましたので、これで問題ないでしょう。

--------------------------------------------【後退灯と室内灯をLED化】----------------------------------------

次に後退灯ですが、これも市販品の素性のよく分からない製品を買うより自分で自作することにしました。



後退灯の純正品は白熱電球15Wですが、大体の発光効率が15lm/Wになりますので、150lm/WのLEDならちょうど1Wで同じ明るさを実現できる計算になります。
ワニクマ店長は本当は1.5WのLEDにしたかったんですが、放熱問題と1Wでも十分明るかったので、自作品を1Wに設定しました。右側が純正15Wと明るさ比較写真。



そして交換した後退灯(1W)と室内灯(0.16W)です。制動灯は元々純正品がLEDでしたので、ここは特にいじる必要ないですね。

--------------------------------------------【ハイビームLED化】----------------------------------------

昔はハイビームは車検対象時期もありましたが、今(2022年)はロービームが対象です。光のカットライン(レンズによる投影式はZの形)部分が
6400cd以上の明るさが必要で、純正は新車で大体12000cdあります。その他に取り付け位置などの保安基準がありますが、興味ある方はwikipediaで。
ハイビームの基準は今は100m先まで照らせることですが、これを満たすには純正60Wハロゲン電球に対して、最低でも約8WのLED電球が必要です。

8Wの根拠はハロゲン電球とLEDの発行効率で計算できますが、ハロゲン電球は1W辺り約20lmの光を出します。LEDは1W辺り約150lm(2020年)ですが、
ハロゲン=60W x 20lm/W = 1200lm LED= 8W x 150lm/W = 1200lm 理論上同じ明るさですね。
ワニクマ店長もとりあえず純正と同じ明るさの1200lm目標で交換することにしました。

もう一つ重要なのは、反射板の焦点が合わないと8W以上のでも光軸がバラバラになって100m先に光が届かない場合もありますので、LED電球選定時に
要注意です。
さすがにハイビーム用はヒートシンクが必要になりますので、これは自作は難しく、仕方なくネット通販で購入してそれを改造することにしました。



そして上の写真が今回購入した海外製のハイビーム用LED電球です。この製品がLEDチップがちょうど純正品と同じ反射板の焦点に合っていましたので、
この製品を選びましたが、問題は消費電力が20W以上あり、光束も3000lmと書いてありました。
明るいのはいいですが、感覚的にとてもこのサイズのヒートシンクで連続20Wも冷やせないです。10分程度点けると温度が100℃以上上昇して、多分飽和温度は
LEDの限界の150℃を超えるので、連続使用は耐久性が怖いですね。
それで消費電力を8W(チップ側)になるように電流を制限する回路を外付けして、防水用シリコーンで固めることにしました。

一応ヒートシンクの裏に小さい放熱ファンがありますが、このファンが故障した時の過熱保護も何もない感じですね。これで20W仕様なんて、設計者は
どういう基準で決めたかよく分かりませんが、8W程度まで消費電力を下げるとちょうどファンが故障して止まっても室温で80℃以下で飽和しました。
本当はもう少し電力を上げても良い思いますが、場所がエンジンルーム内なので、夏場の雰囲気温度を考えるとあまりマージンがないですね。



そして純正の60Wハロゲンと今回交換した8WのLEDの明るさ比較です。



撮影時期は異なりますが、左が純正品で冬に撮影、山奥の駐車場に野生の狐がいて、珍しかったので撮った写真です。右側が8WのLEDハイビーム。
ほぼ計算とおり純正とほぼ同じ1200lmの明るさですね。ちようどロービームが届く40m先ですが、cdで言うとワニクマ店長の視力では15000cdあれば、
ハイビーム基準の100mが十分明るい感じですね。




--------------------------------------------【フォグランプをLED化】----------------------------------------

そして、次はフォグランプです。フォグランプは20Wのハロゲン式白熱電球ですが、これも発光効率で計算すると、150lm/WのLEDなら2Wの消費電力になります。



市販の二千円程度のLEDフォグランプを購入しましたが、これもファンが故障すると10Wも放熱できません。それにフォグランプが10Wもあると、明るすぎて
周りに迷惑です。
ワニクマ店長は純正のハロゲンとほぼ同じ明るさの2.5Wに改造しました。ファンの部分を取り外して、そこに電流制限抵抗を付けてからシリコーンゴムで固めました。



昼間に撮りましたので、点灯状態が分かりにくいかも知れませんが、左の20Wのハロゲンと右の2.5WのLEDがほぼ同じ明るさが分かります。

--------------------------------------------【方向指示灯をLED化】----------------------------------------

そして最後に一番難関の方向指示灯ですね。これは電流を正確に計算する必要があるからです。方向指示灯は通常点滅動作をしますが、ONとOFFの周期が保安基準が
あって、異常時はこの周期が速くなります。これをハイフラッシャーと言ってハイフラと略したりしますが、球切れ状態をドライバに知らせるための安全機能です。
ハイフラは電球が切れた時に電流減少を検出していますが、電子式リレーか弁当箱が管理しています。
ハロゲン電球をそのままLEDにすると消費電流が減少して、電子式リレーか弁当箱が球切れだと誤認識してハイフラを起こしています。

電子式リレーの場合は、閾値を下げたリレーを交換すれば良いですが、ワニクマ店長の車は弁当箱が管理している車種らしく、大体前後足して2.9Aの閾値でハイフラを
判定していましたので、LEDと並列で3.2A電流が流れるようにセメント抵抗を追加して弁当箱中のコンピュータを騙す方法にしました。

純正の電球は21Wになります。これも発光効率で計算すると2W程度のLEDが必要です。ワニクマ店長はLEDを3Wにして抵抗を5Ωにしました。こうすると抵抗に約2.7A
流れて、LEDに約0.5A流れます。LEDは電球切れはしませんが、1個接触不良等を起こしたら合計電流が閾値の2.9Aを下回るので、ハイフラを起こして異常を知らせて
くれるように念のために折角のハイフラ機能をLEDでも何とか機能するようにしました。

まずはLED電球の購入ですが、これもハイフラ抵抗不要と書いてあって、胡散臭いと思いながら試しに購入してみましたが、案の定・・・



左の写真の上が今回購入したLEDですが、メーカー不明です。ハイフラ抵抗不要は嘘ではありませんでした。ということはヒートーシンクもついていないこの小さい
面積のアルミ基板で20Wの熱を放熱しないといけません。これで20Wの熱を逃がすなんて、そんなバカな。もし本当なら素晴らしい技術ですね。
本当かどうか自作の点滅回路でテストしてみました。



案の定数分で温度が130℃以上、10程度動かすと200℃まで上昇して、LEDチップの半田が溶けてポロポロ落ちるでしょう。この筐体だと連続3Wの熱もきついです。
2W程度が限界かなと。
ただ方向指示灯も緊急停止時灯もDUTYが50%(ONOFFが半分半分)なので、3Wでも実際は平均は半分の1.5Wの消費電力になりますので、3Wに改造することにしました。

3Wに改造してから温度が飽和するまで暫く耐久テストです。



実際のハウジングを模擬してLED電球を透明のゼリーケースに入れて熱が籠る状態にして1時間ずっと通電しました。この熱容量だと約30分で温度が飽和します。
温度が約70℃付近で飽和しましたが、重要な保安部品なので、10年以上の寿命を考えて本当はもっと温度を下げたいですが、一旦これで使ってみることにしました。
(方向指示灯と緊急停止灯は連続1時間以上動作させる頻度が殆どないので)

一応純正の21W電球と改造した3WのLEDの明るさを比較して見ました。



発光効率の計算とおり、LEDのほうが約1.5倍明るいですね。

さて、電気的に問題ないように改造しましたので、早速車両に取り付けようとしたら新たな問題が(T_T)



純正品はT20のピンチ違い仕様のソケットで、市販のLEDはT20が多いようです。ワニクマ店長もここしっかり確認しなかったのが・・・
このまま装着すると緩くてすぐ抜けてしまいます。
仕方なく、エポキシ樹脂でT20のピンチ違いと同じ位置に出っ張りを作りました。

これで綺麗にロックがかかって振動をかけても簡単に抜けなくなりましたので、とりあえず一安心。
次はハイフラ防止用抵抗ですね。セメント抵抗器を放熱用アルミ板に付けて防水用シリコーンゴムでポッティングしました。



ちょうどネットで専用のコネクタが購入できましたので、純正のハーネスを傷つけることなく並列接続できました。
この抵抗器も温度が飽和するまで通電試験していますが、苦労したのは車体にあまり良さそうな固定場所がなくて
最後に完成後のビデオです。



ハイフラとはどのような状態か再現しました。点滅周期が少し早くなって球切れ状態とドライバに知らせてくれる機能ですが、純正品は白熱電球でもそう簡単に
球切れしないので、あまり体験した方も少ないでしょう。
その後、21W純正品と3WのLEDの明るさ比較です。少しだけ3WのLEDが明るい状態ですね。

ハイフラ防止抵抗とトータルで純正品と同じ電流が流れますので、方向指示灯だけはLED化しても特に節電にはなりませんが、点滅状態が何となく高級感を感じる
自己満足くらいですね。

そして、いつも半年に一度定期点検に行っているディーラーで無事車検が通りました。
保安部品を改造しているので、ディーラーに車検に行く時は、緊張半分自慢半分の気分でしたね(笑)
これで夜のドライブの楽しみもできました




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